宮城の沢  (札幌市西区)


    氏家 正毅       

 「宮城の沢」は、琴似発寒川の支流、宮城の沢川をその脇の林道沿いに巡る探鳥ルートです。平和の滝の東隣といえばおおよその見当がつくでしょうか。そこが近年私の通い始めたホームグランドです。

 ホームグランドと偉そうに言ってしまいましたが、通い始めてまだわずか1年目。実は先輩方から、自分のホームグランドを持つと色々勉強になると教えられ、「西野に住んでいるのなら、宮城の沢はぜひ行った方がいい。」と勧めていただいたのがきっかけでした。以前からここは、ベテランバードウオッチャーの間ではよく知られた穴場的存在だったようです。

 ではその宮城の沢について、まだ少ない知識ではありますが紹介したいと思います。
 場所は、JRバス西野平和線の終点からさらに先、平和の滝への右折路をそのまま直進し平和霊園を通り抜けると、奥に林道入り口のゲートがあります。そこからがこのルートの出発点です。ベストシーズンは4月下旬からゴールデンウイーク頃でしょうか。
 この時期まだ残雪のある林道に足を踏み入れると、すぐに鳥たちが出迎えてくれます。この辺りはアオジ、クロジ、ルリビタキ、カラ類をよくみかけます。100mほど進むと壊れた鉄橋があり、そこを渡ると進むたびに次々と地面から鳥が飛び立ちます。このルートは主に地面を注意しながら鳥を探すのがポイントだと思います。鉄橋を過ぎた辺りからは、先に挙げた鳥たちの他ヤブサメ、クロツグミ、ミソサザイ、等も見られます。道路脇の笹の中を注意しながら歩くとベニマシコがいたこともありますし、私は運良くコマドリにも出逢えました。

 左手に宮城の沢川の流れを聞きながら林道をさらに登っていくと左手に砂防ダムが現われます。ダムの上ではキセキレイをよくみかけました。
 砂防ダムを過ぎるとトドマツの林に入ります。所々のトドマツ、カラマツの幹にクマゲラの採餌痕を見かけます。トラツグミもこの辺りでよく見ました。ここでもルリビタキは、道案内をするように先へ先へと飛んでいますし、アオジがすぐ近くの枝で美しい声を聞かせてくれます。その声が、沢の流れる音と相まって心地よく、いていてとても幸せな気持ちになります。

 さらに進むと、木を渡しただけの朽ちかけた橋がでてきますが、春はまだ残雪が高く乗っていて渡りづらく、注意が必要です。
 橋を渡ると今度は宮城の沢川を右手に登っていきます。この辺りでも沢の方からよくコマドリの声を聞きました。ここから先は道の両脇にトドマツの低木を見ながら進みます。トドマツの葉の中を、耳を澄ませ目を凝らすと「チッ、チッ」とキクイタダキが飛び交っています。さらに進むと両脇がカラマツ林に変わり、ここでもクマゲラの採餌痕が所々にみられます。アカゲラ、コゲラ、そしてエナガをこの辺りでよく見かけます。私はここでウソに出会いました。

 トドマツ、カラマツの林を抜けるとその先は明るく開けた落葉広葉樹の山林がつづきます。
 ここからは、おなじみのカラ類、キツツキ類、キバシリ等が時折見られる程度で変化のない山道を進みます。再び宮城の沢川を右に渡る所までくれば、ここが一応の折り返し地点で、再び来た道を戻ります。さらに進めば林道はぐるりと近辺をめぐってこの地点に戻って来るようですが、その先は行ったことがありません。さらに進まれる方は地形図等で確認してください。
 下りの道々でもまた、地面に木の枝に多くの鳥たちをみることができると思います。

 4月下旬から5月上旬、このルートは短い距離の間にたくさんの鳥たちに出逢える確率が高く、その鳥の多くが先にも述べたように、雪解け後現われた地表で餌をとっています。チャンスに恵まれればまさに道を曲がるたびに鳥がいるといった感じですので、静かにゆっくり地面に注意しながら歩くことをお勧めします。
 それ以外の時期にも何度か通いましたが、その時はあまり鳥に恵まれませんでした。

 さらに昨年の11月中旬に訪れた時、少し気になる事がありました。普段はあまり車の気配がなかった林道に、踏み散らしたように車のわだちが残っていたのです。そのわだちが、あるところでは林道からはずれていたり、道を横切る小さな沢の中を通っていたりして地表がだいぶ痛んでいました。私は最初、台風によって道を塞いでいた倒木の処理のために、作業車がはいったのかと思っていました。しかし途中で出会った、よくここを散歩しているという方に聞いたところ、4輪駆動の車が遊びで入って来ているのだと言う事でした。自分の目で確認していないので断定はできませんが、もし事実であればたいへん憂慮すべき事です。静かな鳥たちの生息場所が心無い人達のために脅かされるのは非常に残念です。普段は林道のゲートは閉められていて、一般車両は進入が禁止されているはずなのですが。今後、少し注意して見て行きたいと思います。

 ここは、普段人の訪れることが少ない場所だけに、鳥たちも多く姿をみせるのでしょう。鳥を見に入る自分も含めて、できる限り鳥たちの生活を脅かさないように、この場所を長く楽しんでいければと思います。

(平成17年3月発行「北海道野鳥だより」139号から転載。写真は筆者撮影。)

< 地図製作:高橋良直 >