大荒田 忠良
利根別原生林は岩見沢市街地に隣接する"原始の森"で,その面積はおよそ400ヘクタール,自然休養林,水源涵養保安林,鳥獣保護区などに指定されています。また40種以上の広葉樹の天然林や約200種の下層植物がひろがり,そんな豊かな植生のなかで,約30種以上の野鳥が繁殖しているといわれています。シジュウカラ,ゴジュウカラ,キバシリ,エナガ,コゲラ,アカゲラ,オオアカゲラ,クマゲラ,フクロウ,キビタキ,オオルリ,オシドリ,カルガモ等々。
春,フクジュソウ,ナニワズが咲きはじめると森の入口にひろがる大正池には次々と水鳥がやってきます。マガモ,カルガモ,オシドリ,カイツブリ,アオサギなど。ときにはイソシギ,カワアイサが姿を見せることもあります。大正池の奥の大沢の流れではミソサザイを見ることもできます。森がすこしづつうすみどりいろに染まってき,エゾヤマザクラやコブシの花が色どりを添える頃,原生林は最も初々しい春の季節を迎えます。ミヤマスミレ,ミヤマエンレイソウなどが咲き乱れ,待ちに待ったキビタキ,オオルリがやってきます。アオジ,イカル,クロツグミなども姿を見せてくれます。
5月も後半に入ると,うすみどりいろに明るかった森もだんだん木の葉が繁くなってき,初心者の私にはなかなか鳥の姿を確かめることができません。暫らくはランなどの草花を中心に楽しむことになります。ユウシュンランにはじまってコケイラン,サイハイラン,ノビネチドリなど10数種のランを見ることができます。
夏鳥が南へ飛びたち,森の木々の葉も落ち,やっと鳥の姿を見つけやすくなる頃,キレンジャクやアトリなどの冬鳥たちがやってきます。キバシリやエナガ,ヤマゲラ,クマゲラ,フクロウなどの留鳥もじっくり観察することができます。バードウォッチングの季節到来です。
利根別の森が一面雪におおわれるとネズミ,エゾリス,ウサギ,キツネなど小動物の足跡があちこちに見られます。特にネズミの足跡のデザインは尾を曳くからでしょうか,なんとも美しいです。空を見上げるとトビが数羽,いつも旋回していますが,ときにはオジロワシ,オオワシが悠々と飛んでいることもあります。
原生林の中は散策路が縦横に交差し,どこを歩いていても鳥たちに出会える楽しい森です。それでも7年ほど前,大正池周辺の散策路建設が進められたとき,水鳥の繁殖が心配されたり,クマゲラが営巣を放棄した,ということがありました。原生林入口周辺に芝が植えられ,かっての姿を変えてしまったのもこのときでした。利根別原生林が,"原始の森"としての誇りをもちつづけられるよう願っています。
(平成15年12月発行「北海道野鳥だより」第134号から転載。)
< 地図製作:高橋良直 >
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